概要
ステルイズは梅毒に対する抗菌薬であるベンジルペニシリンベンザチン水和物の筋注剤です。
海外では広く70年以上も使用されており、梅毒治療のガイドラインにも記載されていますが、日本ではこれまで導入されてきませんでした。
国内の関連団体から要望を受けた厚生労働省がファイザーに開発を要請し、2022年1月に薬価収載され、日本でも世界標準の治療を選択できることとなりました。
薬効と特徴
ベンジルペニシリンベンザチン水和物はペニシリン系の抗菌薬です。溶解性が低いことから筋肉内に投与すると徐々に吸収されるため、有効成分であるベンジルペニシリンが長く血中に維持されます。
日本人健康成人に本剤240万単位を単回筋注したときのデータでは、ベンジルペニシリンは48時間で最高血漿中濃度に達し、見かけ上の半減期は188.8時間となっています。
海外の臨床試験ではHIV患者を含む早期梅毒成人患者、HIV感染早期梅毒成人患者、妊婦梅毒患者、先天梅毒の新生児に対する有効性が確認されています。
用法用量
成人と小児で用量が異なります。最新の添付文書でご確認ください。
用法については共通で、単回、筋肉内投与となります。
調製方法
最初からシリンジに封入されているプレフィルドシリンジ製剤です。注射針を取り付けることで使用できますので、溶解、希釈、混合などの手順は不要です。
注射針の太さに関する注意
ステルイズの規格によって使用する注射針の太さ(ゲージ)が異なります。
通常成人の場合: 240万単位シリンジを使用し、使用する注射針は18Gです。
通常小児の場合: 60万単位シリンジを使用し、使用する注射針は21Gです。
筋肉内注射時の注意
粘性の高い液となっています。注射針内で液が詰まってしまうことを予防するため、注射針刺入後は1分間を目安にゆっくりと一定の速度で注入する必要があります。また、注入後はシリンジ内筒を押さえたまま針を引き抜く必要があります。
小児の場合は数回に分けて筋肉内注射する場合があります。その際は別の部位に筋肉内注射する必要があります。
副作用
重大な副作用として、ショック、アナフィラキシーが報告されています。
事前に既往歴やアレルギー歴、特に抗生物質等によるアレルギー歴を必ず確認する必要があります。また、ショック等に対する救急処置のとれる準備をしておくことも求められます。
ショック、アナフィラキシーの発現は投与30分後がピークとなっているため、投与後は患者に安静にしてもらい、しばらく観察する必要があります。