医薬品の添付文書を読んでいると成分名に「ベドチン(vedotin)」が含まれるものがいくつか見つかります。具体的には以下のようなものです
ベドチンが含まれる医薬品一覧(2026年2月現在)
- ブレンツキシマブ ベドチン(アドセトリス点滴静注用)
- エンホルツマブ ベドチン(パドセブ点滴静注用)
- チソツマブ ベドチン(テブダック点滴静注用)
- ポラツズマブ ベドチン(ポライビー点滴静注用)
これらは全てモノクローナル抗体にMMAEという抗悪性腫瘍剤をつなげた医薬品です。といってもMMAEは直接モノクローナル抗体にくっついているわけではなく、リンカーやスペーサーと呼ばれる接続のための分子が間に入っています。ベドチンとはこのリンカーを含めたMMAEをつなげる一連の結合構造を指します。
MMAEについて
MMAEはMonomethyl auristatin E(モノメチルアウリスタチンE)の略です。MMAEは有糸分裂阻害抗悪性腫瘍剤で、血液がんや固形癌まで様々なな癌種に対して強力な殺細胞作用を示すことがわかっています。
ただし、毒性が強いため通常は単体では用いず、モノクローナル抗体と結合させがん細胞にのみ作用させる形で利用されます。
作用機序
ベドチンは様々な標的を持つモノクローナル抗体と組み合わせて使用されます。つまり、モノクローナル抗体が標的とする細胞内のみにMMAEを送り込むことで、MMAEの強力な抗がん作用を発揮させつつ、全身毒性を軽減することができます。
モノクローナル抗体とベドチンの複合体は、まずモノクローナル抗体が細胞の標的分子に結合します。そのまま標的細胞に取り込まれた後、カテプシンによってリンカーが切断されMMAEが細胞内に遊離します。
下図の赤い部分がMMAEで、青い部分がカプシンにより切断されるリンカーです。

ライセンスと今後の展開
ベドチンが素晴らしい技術であることは間違いありません。この技術は開発を主導したシアトル・ジェネティクス社(現セージ・セラピューティクス)が現在もライセンスを保持しています。この技術を使用した医薬品開発は今後も進んでいくとみられ、今も多くの臨床試験が進行しています。また、今後は抗がん剤部分がMMAEに代わる他のもの、あるいはリンカー部分が他に代わるものなどの開発が進む可能性もあります。