MSDが新規不眠症治療薬「ベルソムラ錠」(一般名:スボレキサント)の製造販売承認を取得したことでオレキシンが注目を集めはじめています。
オレキシンは神経ペプチドの一種で、脳内での情報伝達に関わっています。
ユニークな発見の過程
オレキシンは日本人研究グループが発見し1998年Cellに発表されました。
その発見手法はこれまでとは真逆と言えるユニークなものでした。
オレキシンのような情報伝達物質は、自身が結合する受容体なくしては働きません。情報伝達物質と受容体は対になっていて、例えば有名なドパミンもドパミン受容体という特定の受容体にのみ結合します(細かい部分では例外もあるのですがここでは触れません)。
これまで発見されている情報伝達物質は物質自体が先に発見されており、対応する受容体は後から探すことで見つかっています。
ところが近年のゲノム解析技術の進歩により、ゲノムから受容体らしき配列を直接見つけられるようになりました。
これらの受容体は現在では整理され、データベース化されています。
このような受容体には、受容体に対応する情報伝達物質がまだ見つかっていないものも含まれています。
このような受容体はオーファン受容体と呼ばれます。
オーファン受容体は分子構造から先に見つかることから、その機能がわからないというのも特徴です。
オレキシンは対応するオーファン受容体に対する情報伝達物質を探すことで発見されました。
その機能については後からわかっていくことになります。
オレキシンとオレキシン受容体の機能
オレキシンをラットの脳内に投与すると摂食量が上がることから、当初は食欲に関与する物質として研究されましたが、その後オレキシン受容体の機能を壊すとナルコレプシーが発症することが動物実験などでわかり、覚醒-睡眠に関与していることがわかりました。
さらに研究が進むことにより、オレキシン系は覚醒を安定化させる、覚醒を維持するといった機能を司ることがわかってきています。
ですがオレキシン授受容体は脳全体に分散しており、部位による機能の差などはまだわかっていません。今後まだまだ新しい発見がありそうです。