ヒドロキシエチルデンプン(HES)製剤は、循環血漿量が減少してしまった場合の血漿補充剤として従来より使用されています。
2013年10月にヒドロキシエチルデンプン130000輸液として、ボルベン6%輸液(フレゼニウスカービジャパン/大塚製薬/大塚製薬工場)が発売されました。
従来のHES製剤との違い
これまで日本で使用できたHES製剤にサリンヘス(大塚製薬)がありますが、成分のHESに違いがあります。
- ボルベン:HES130 / 0.4
- サリンヘス:HES70 / 0.5
130や70はHESの分子量で、それぞれ130000ダルトン、70000ダルトンを意味します。
その後ろについている0.4と0.5は、モル置換度で、グルコース内のHがどれだけヒドロキシエチル基(-CH2-CH2-OH)に置き換えられているかを表しています。
このモル置換度は両製剤の添付文書を参照しても記載されていない数字です
HESは血清アミラーゼによって分解されますが、分子量、モル置換度ともに数字が大きいと、より分解されにくいことを意味します。
分子量とモル置換度
HES製剤は、古くから有用な代用血漿として認識されていましたが、問題点として
- 血漿への蓄積による血液凝固因子への影響
- 組織残留性による腎機能への影響
といった要素も指摘されていました。
このような副作用と血漿増量効果のバランスはHESの代謝されやすさがカギとなります。
そのため、最適な「分子量:モル置換度」の比が模索されてきました。
海外では450キロダルトンといった大きな分子量のものも使われています。
適応
循環血液量の維持
「出血」といった表記が無く、適応はサリンヘスよりも広いといえます。
用量
50mL / kg
1000mLまでと制限のあるサリンヘスよりも高用量の使用が可能です。
従来のHES製剤の上限を超えて投与できるため、HES製剤の次の手段であるアルブミン投与や輸血を抑えることが期待できます。
副作用
血清アミラーゼ上昇、血中クロール増加、血中ナトリウム増加、ショック、アナフィラキシー、腎機能障害
その他
海外輸入品で、2つのポートがついており、日本ではあまりなじみのない形状となっています。
袋に入っていますが、袋ごとの滅菌や不活化ガスの封入は行われていません。