近年、抗菌薬に耐性を示す耐性菌が問題となっています。
耐性菌が抗菌薬を無効化する方法は多彩であり、どのように抗菌薬を無効化しいてるかによって耐性菌にも分類が存在します。
以下に主な耐性菌の分類と特徴を示します。
βラクタマーゼ産生菌
βラクタム系抗菌薬を分解するβラクタマーゼを産生することによって抗菌薬に耐性を示します。
βラクタマーゼの分類
構造 | クラス分類 | 通称 | 備考 |
---|---|---|---|
セリンβラクタマーゼ(セリン残基がある) | クラスA | ペニシリナーゼ | ペニシリンをよく分解する。 |
クラスC | セファロスポリナーゼ | セファロスポリンをよく分解する。 | |
クラスD | オキサシリナーゼ | 基本的にペニシリナーゼだが、オキサシリンもよく分解する。 | |
メタロβラクタマーゼ(亜鉛(メタル)が入っている) | クラスB | カルバペネマーゼ | カルバペネムを分解する。クラブラン酸などのβラクタマーゼ阻害剤が効きにくい |
ESBLs(ESBLs産生菌)
クラスAの典型的なペニシリナーゼが、他のセファロスポリンなどを分解するようになったものです。
ESBLのEはExtendedで、通常のペニシリナーゼと比べて他の領域に耐性が伸びていることを示しています。ペニシリン、セフェム、モノバクタム、アミノグリコシド、フルオロキノロンなど多くの抗菌薬分解します。
ESBLの耐性遺伝子はプラスミド上に存在し、菌から菌へ直接受け渡されるという特徴があります。
現在のところESBLs感染の治療にはカルバペネム系が推奨されています。
ニューデリーメタロβラクタマーゼ
メタロβラクタマーゼの一種です。メタロβラクタマーゼ産生菌はもはや珍しくありませんが、このニューデリーメタロβラクタマーゼ産生菌については、アシネトバクターや緑膿菌ではなく、ヒトの腸管に定着しやすい大腸菌や肺炎桿菌において多く見つかる点が問題視されています。
BLNAR
BLNARとはBeta Lactamase Negative ABPC Resistanceの略です。
β-ラクタマーゼを産生しないのにABPC(アンピシリン)に耐性を示す菌を指します。
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
メチシリンと名が付いていますが、ペニシリン系、セフェム系などβラクタム系抗菌薬に広く耐性を示します。
耐性機序は細胞壁合成酵素ペニシリン結合蛋白(PBP2’)を産生することによります。
治療にはMRSAに抗菌活性を持つバンコマイシンが古くから使用されていますが、近年そのMICが上昇傾向となっています。
他剤耐性緑膿菌(MDRP)
カルバペネム、アミノグリコシド、フルオロキノロンに対して耐性を示します。
その耐性機構は単一では無く、複数の機構を持つと考えられています。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)
ペニシリンに耐性を示す肺炎球菌です。肺炎球菌は肺炎だけでなく中耳炎、髄膜炎などの原因菌となります。
肺炎球菌がRPSPであるかどうかはペニシリンGのMICによって分類されますが、アメリカ臨床検査標準委員会(CLSI)の2008年基準によれば、髄膜炎と非髄膜炎で基準が異なるので注意が必要です。
Susceptible | Intermediate | Resistance | |
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髄膜炎 | ≦0.06 | – | 0.12≦ |
非髄膜炎 | ≦2 | 4 | 8≦ |